
現在、韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』が世界中を席巻していることもあり、アジアの映画界も活気に満ちているところですが、今回ご紹介するのは、中国新世代をけん引する新鋭監督が放つ話題作です。それは……。
『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』
【映画、ときどき私】 vol. 294
父親の死をきっかけに、故郷の凱里(かいり)へと帰ってきたルオ・ホンウ。彼は、マフィアに殺された幼なじみや自分を捨てて駆け落ちした母の記憶を拾い集めるように、街をさまよっていた。
そして何よりもルオの心から離れなかったのは、運命の女だと思っていたワン・チーウェンのこと。いつしか女の面影を追い求めて、旅へと出ることになるのだった……。
本作は、中国国内で公開1日にして41億円という驚異的な興行収入を叩き出し、アメリカでもロングランとなった注目作。なかでも映画が始まって80分ほどしてから2Dから3Dへと切り替わり、そこから60分ワンカットで見せる驚異の映像には称賛の声が上がっています。そこで、その舞台裏についてこちらの方にお話をうかがってきました。
中国の若き鬼才ビー・ガン監督!
2015年に26歳という若さで『凱里ブルース』で長編監督デビューを果たし、国際的な評価を得たビー・ガン監督。長編2作目となる本作は、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門への出品を皮切りに、各国の映画祭で話題となっています。監督にとって意欲作ともいえる作品へ込めた思いや大ヒットの理由などについて語っていただきました。
―まずは、今回初めて日本に来られたそうですが、どのような印象を受けているのかを教えてください。
監督 最初に見た印象として、日本は秩序に満ちた場所だと感じました。それは車から見る景色や街路樹の配列ひとつとってもそうですが、美しい秩序がある国だと思います。
―そんなふうに、日常生活で目に入ってくるものからインスピレーションを得ることは多いですか?
監督 確かに、インスピレーションの源は、自分の暮らしのいろいろなディテールからすくい上げることはあります。ただ、実際に作品を作り終えて、自分で振り返ってみたときにどこからインスピレーションを拾ってきたのかは、自分自身でも思い出せないことが多いんですよ。
ちなみに、今回の作品で言うならば、3Dのシーンを撮った場所は前作の『凱里ブルース』の撮影でも使っていた場所で、「次もここで撮りたい」とずっと思っていたので、前作との関連はすごく大きいと思います。
―ということは、この作品に関しては、まずは場所から生まれたということでしょうか。
監督 そうですね、最初からそれは頭のなかにありました。脚本を書いているときは、記憶と夢の2つを軸にした作品にしようと思っていたのですが、この場所のことがどうしても忘れられなかったので、ここを舞台にしようと決めてから物語を組み立てていきました。
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