日本車が高くなった、という話をよく耳にする。実際に1.3Lクラスのコンパクトカーの場合では、安全装備の充実などもあり10年前に比べて20万円近く高くなっている。
安い、買い得感が高い、というのはクルマに限らず物を購入しようと思った時のファーストプライオリティになる要素で、安いことに文句をつける人はあまりいない。
しかし、安かろう悪かろうでは嫌だし、古いモデルが安く変えると言ってもあまり魅力的には映らない。
本企画では、現行の新し目のモデル(なかには最新モデルもあり!!)で、同クラスのライバルに比べて安く、買い得感のあるバーゲンプライスのクルマを集めてみた。
人気のSUVに買い得感の高いモデルが多いのもうれしい。
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、MAZDA、MITSUBISHI、SUZUKI、平野学、池之平昌信、奥隅圭之
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コンパクトSUV:トヨタヤリスクロス
価格:179万8000~281万5000円
最近はコンパクトSUVの人気が高い。この中でも価格の割安感で注目されるのがヤリスクロスだ。
フルLEDヘッドランプや18インチアルミホイールを標準装着したハイブリッドZが258万4000円になる。
同等の装備を採用したライバル車のキックスX(275万9900円)、ヴェゼルハイブリッドZホンダセンシング(276万186円)に比べると、ヤリスクロスの価格は約18万円安い。
ヤリスクロスのホイールベース(前輪と後輪の間隔)は、ヤリスとほぼ同じ数値だ。キックスとノート、ヴェゼルとフィットに比べて変更点が少なく、コストも低減しやすいために価格を抑えられた。
価格を抑えた目的は、キックスやヴェゼルに対抗するためでもあるが、トヨタ車における価格分布にも配慮している。1Lターボエンジンを搭載するライズZが206万円、ノーマルエンジンのヤリスクロスZは221万円、1.2LターボのC-HR・S-Tは241万5000円だ。
仮にヤリスクロスZの価格が、ライバル車と同様に18万円高いと、239万円になってC-HR・S-Tに近付いてしまう。ヤリスクロスはC-HRに比べるとボディがコンパクトで後席も狭く、動力性能も下がるために割高感が生じる。ライズZとの価格差も開きすぎになる。
トヨタSUV軍団の価格に整合性を与えるためにも、ヤリスクロスはライバル車に比べて安く抑える必要があった。
ヤリスクロスの推奨グレードは、ノーマルエンジン、ハイブリッドともに中級のGだ。オプションでブラインドスポットモニター(4万9500円)などを装着したい。
ベーシックなXは装備が貧弱になる。特に価格が最も安いノーマルエンジンのX・Bパッケージは、衝突被害軽減ブレーキが省かれるのでまったく推奨できない。
プラグインハイブリッドSUV:トヨタRAV4・PHEV
価格:469万~539万円
RAV4には直列4気筒2L、2.5Lハイブリッドに加えて、2.5LのPHV(プラグインハイブリッド)も用意される。
PHVはハイブリッドに充電機能を加えただけでなく、フロントモーターを北米で販売されるハイランダーハイブリッドと同じ仕様に強化した。
そのためにフロントモーターの最高出力は182馬力、最大トルクは27.5kgmになり、ハイブリッドの1.3~1.5倍だ。エンジンとモーターの駆動力を合計したシステム最高出力も、RAV4ハイブリッドは222馬力、PHVでは306馬力に高まり、動力性能にも余裕が生まれた。
PHVに搭載されるリチウムイオン電池の総電力量は18.1kWhだから、プラグインハイブリッドでは容量が大きい。
WLTCモードでは、1回の充電で95kmを走行できる。アウトランダーPHEVのリチウムイオン電池は13.8kWhで、1回の充電で走れる距離はWLTCモードで57.6kmだから、RAV4・PHVは高性能だ。
RAV4・PHV・Gの価格は469万円になる。モーターの駆動力を高め、大容量のリチウムイオン電池を搭載しながら、アウトランダーPHEVのGプラスパッケージ(458万2600円)と同程度に抑えた。
RAV4ハイブリッドGとの価格差は約66万円だ。PHVでは経済産業省による補助金の交付も受けられ、その金額は2020年度実績ではあるが22万円になる。
従ってRAV4ハイブリッドに実質44万円を上乗せすると、充電機能を備えたパワフルなPHVに上級化できる。
グレード選びは、Gに安全装備をオプションで加える方法が割安だが、助手席のパワーシートなどが欲しいなら499万円のG・Zを選ぶ。
3列シートSUV:マツダCX-8
価格:294万8000~467万600円
3列シート車は、ミニバンだけでなくSUVにも用意される。その中で3列目が最も快適な車種はCX-8だ。全長が4900mm、ホイールベースも2930mmと長く、足元空間を十分に確保した。
床を平らに仕上げたミニバンではないから、3列目に大人が座ると、膝が持ち上がって腰は落ち込む。着座姿勢は窮屈だが、コンパクトミニバンのフリードと同等の居住性を確保した。インパネなど内装の質も高く、Lサイズミニバンとしての満足感も味わえる。
価格は2.5Lノーマルエンジンを搭載する25Sプロアクティブが340万6700円だ。ライバル車のCR-Vは、3列シートを装着したEXが355万6300円になる。装備に違いが見られるが、CR-VはLサイズSUVとして質感が低い。
例えばインパネに施されたステッチ(縫い目)は、コンパクトSUVのヴェゼルが本物の糸を使うのに、CR-Vは模造だ。ユーザーの満足度を考慮すると、CX-8の買い得感が強い。
グレードは予算に余裕があるなら、クリーンディーゼルターボを搭載するXDプロアクティブがベストだ。価格は382万8000円に高まるが、最大トルクは4.5Lのガソリンエンジンと同等で、WLTCモード燃費も15.8km/Lと優れている。
軽油は価格が安いので、燃料代は1.5LガソリンのコンパクトSUV並みに抑えられる。さらにクリーンディーゼルは、購入時に納める環境性能割と自動車重量税も非課税だ。
逆に2.5Lガソリンターボは、ガソリンエンジンなのに高回転域の吹き上がりが鈍く、運転感覚はディーゼルに近い。選ぶ価値が乏しく、価格も割高になる。購入時の税額も高い。
クーペタイプSUV:三菱エクリプスクロス
価格:約255万円~約450万円(12月発売開始予定:正式価格未発表)
リアゲートを寝かせたクーペ風のSUVとしては、エクリプスクロスが買い得だ。
新たに追加されたPHEVの価格は、約385万円~約450万円とされる。アウトランダーのPHEV・Gは430万9800円だから、エクリプスクロスPHEVは16万円ほど価格を安く抑えた。
また、1.5L、直4ガソリンターボなら、約255万円~約335万円と、車格を考えると買い得感は大きい。
PHEV、1.5Lガソリンターボとも、エクリプスクロスは、操舵に対する車両の反応がSUVでは機敏な部類に入る。峠道などを走ると、走行安定性を損なわない範囲で、車両を機敏に内側へ向けやすい。
ほかの一般的なSUVは、基本部分を共通化したアウトランダーを含めて、操舵感は穏やかで安定性を高める設定だ。
その意味でエクリプスクロスは、5ドアクーペ風の外観と相まってスポーティ感覚を強めた。この個性にも選ぶ価値がある。
ライトウエイトFFスポーツ:スズキスイフトスポーツ
価格:201万7400~208万8900円
ライトウエイトFFスポーツで、最も買い得な車種はスイフトスポーツだ。
まずベース車の素性が優れている。ボディが軽く操舵感が素直で、安定性も良好だ。ベース車が優れていなければ、いくら手を加えても、上質なスポーティカーは開発できない。
そしてスイフトスポーツは、直列4気筒1.2Lエンジンを1.4Lターボにパワーアップして、最高出力は140馬力(5500回転)、最大トルクは23.4kgm(2500~3500回転)を発生させる。ショックアブソーバーはモンロー製で、ブレーキも強化した。
内容をこれだけ充実させながら、価格は6速AT仕様が201万7400円だ。
GRヤリスに1.5Lノーマルエンジンを搭載したRSの265万円と比べても、スイフトスポーツは大幅に安い。ヤリスのノーマルグレードになる1.5Zの187万1000円(6速MT)に近い設定だ。
そのためにスイフトスポーツは販売も堅調で、2020年1~9月の登録台数は、コロナ禍の影響を受けながらも1カ月平均で1000台を少し超えた。
スイフトのノーマルエンジン車とハイブリッドは、全グレードを合計して1カ月平均が約1100台だから、スイフトのほぼ半数をスポーツが占めている。ライトウエイトスポーツのベストセラーといえるだろう。
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October 28, 2020 at 05:00AM
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