首都圏などの非降雪地域で雪が降るのは多くても年に数回。そうなると、スタッドレスタイヤへの履き替えを「あまり効率的ではないなぁ」と感じているユーザーも多いでしょう。
そんなユーザーにとって興味深いのが「オールシーズンタイヤ」と呼ばれるタイヤ。1年中使えることをセールスポイントとしています。
そんななか最近では韓国や中国などのいわゆるアジアンタイヤのスタッドレスタイヤが格安で売られています。
気になるのはオールシーズンタイヤは、冬専用のスタッドレスタイヤと比べて性能面に不安はないのかということ。
そして、アジアンタイヤメーカーのスタッドレスタイヤは価格は格安だが、性能は大丈夫なのかということ。
この2つの悩ましき疑問について、自動車テクノロジーライターの高根英幸氏が迫ります。
文/高根英幸
写真/ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】韓国、中国、台湾ほかアジアンタイヤ詳細写真
アジアンタイヤは激安だが信頼性はあるのか?
タイヤはクルマにとって最も大事なパーツであり、しかも消耗品だ。タイヤが磨り減り、残り溝が0.8mm以下であれば車検をパスすることはできないし、溝が浅い状態のタイヤはロードノイズが大きくうるさいだけでなく、雨天走行時にはスリップしやすいので大変危険だ。
近年は中国や韓国のタイヤメーカーが生産している安いタイヤが日本国内でも流通している。
タイヤ交換の必要が生じると、それら安いタイヤの存在が気になってくるものだ。古くて磨り減った国産タイヤならば、新品のアジアンタイヤの方がグリップや静粛性も高くて快適で安心できる、というユーザーの声もある。
しかしながら知人が国産タイヤでバーストした経験がある筆者としては、タイヤはまず信頼性を最重視してほしいと思う。
またアジアンタイヤでも、最近はピンキリでブランドにより性能にも大きく差があるようだ。
なぜならアジアのタイヤメーカーでも日本や欧州のタイヤメーカーと技術提携して、キチンとしたタイヤ作りをマスターしているところと、エンジニアを雇っただけで独自に見様見まねでタイヤを生産販売していると思われるところに大別できるからだ。
タイヤの生産販売は、トレッドデザインやコンパウンド、構造や金型といった技術的なノウハウだけでなく、クルマにおけるタイヤという製品がもつ重要性といった基本姿勢をどれだけ理解しているかも重要な要素になる。
いずれまた交換しなければならない消耗品だから、なるべく安く済ませたいという心理が働くのは分かるが、タイヤはクルマの性能すべてに影響を与えるものだ。
とりわけスタッドレスタイヤは、冬の氷雪路を安全に走るために夏タイヤと交換して使うものなので、安全安心できる商品でなければ意味がない。
価格が安い理由が、現地の人件費が低いというだけなら何の問題もないが、実際には品質や性能にも差があるのだから、そのあたりも十分に理解してスタッドレスタイヤを選ぶべきだろう。
実際に同一サイズのスタッドレスタイヤの平均価格を比較
実際の価格差は最大で10倍もあると言われている。例えば国産スタッドレスの最新型であれば1本4万円もするサイズが、聞いたこともないようなブランドでは4000円で売られている、という具合だ。
実際にはそこまで極端な価格差のタイヤは見つけることはできなかったが、売れ筋サイズの1つである205/60R16では4倍くらいの価格差は確認できた。
1台分で国産最新スタッドレスなら8万円、片やアジアンスタッドレスタイヤなら2万円となれば、安い方を買いたくなる気持ちも理解できる。
しかし、スタッドレスタイヤは安いほど良いという商品ではなく、品質が高く一定以上の性能を確保していなければ意味がないものだ。
すべてのアジアンスタッドレスが安いだけで使いものにならない、とは言わないが、安いアジアンスタッドレスのなかでもやはり激安商品は性能や品質の点でかなり劣る。
最近試したものでは、特に氷上性能と高速性能は10年以上前の国産スタッドレスの方がマシな商品もあった。
最新型ではなく1世代、2世代前のスタッドレスタイヤであれば、国産でも価格も安くなっているので、アジアンスタッドレスとの価格差もかなり縮まる。
旧モデルといっても生産年が古い訳ではなく生産が継続されているもので、売れ筋サイズに生産が絞り込まれている。
そのため自分のクルマに履けるサイズがあるとは限らないという問題はあるが、それでも銘柄にこだわらなければ国産スタッドレスでも最近生産したタイヤを安く手に入れることができるのだ。
今回はインターネット上(価格com)で価格を調べ、代表的な商品を比較してみた。価格変動はあるが、今シーズンの平均価格をみると、やはり国産スタッドレスの間でも最大で2倍の価格差があった。
■205/60R16の主なスタッドレスタイヤ1本の価格比較
※2019~2020冬季の平均価格 (価格com)
■ブリヂストン BLIZZAK VRX2/2万3300円
■ヨコハマタイヤ iceGUARD 6 iG60/2万400円
■ダンロップ WINTER MAXX 02/1万8700円
■TOYO GARIT G5/1万1800円
■ハンコック(韓国) Winter icept* iZ2 A W626/1万2600円
■ナンカン(台湾)ESSN-1/8400円
■ケンダ(台湾)ICETEC NEO KR36/7000円
■HIFLY(中国)WIN-TURI212/6000円
■オベーション(中国)W586/5500円
■205/60R16の主なオールシーズンタイヤ1本の価格比較
※2019~2020冬季の平均価格 (価格com)
●ヨコハマ BluEarth-4S AW21/1万8000円
●ダンロップALL SEASON MAXX AS1/1万5600円
●グッドイヤーVector 4Seasons Hybrid/1万6000円
●ピレリCinturato ALL SEASON PLUS/1万7000円
※掲示している価格は最安値ではありません。今シーズンの平均価格となります。3月上旬現在のもので時期、地域によって変わってきますので参考程度にお考え下さい。
ハンコックやナンカンなどの名の知れたアジアメーカーのスタッドレスと旧モデル国産スタッドレスでは価格差はほとんどなかった。
これは性能差も少ないと思われるので、信頼性やドライ性能など自分が重視する要素で選んでも良さそうだ。
またタイヤは同銘柄でも価格だけに注目して販売店を選ぶと、1年以上前に生産されたタイヤしか選べないケースも多い。
タイヤメーカー系の販売店は比較的価格が高めだが、その分在庫タイヤの保管環境も良く、取り寄せるタイヤも生産年週が新しい傾向にある。
1年余計に使えると思えば、その価格差をどう考えるかも判断材料とした方がいいだろう。
オールシーズンタイヤがおススメなケースとは?


■スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤの主な違い

毎年必ず雪が道路に積もる訳ではないので、使うかどうか分からないから安いものを買うという考え方なら、スタッドレスタイヤ、それも氷雪性能の低い安ものを買うのは無駄な出費になりかねない。
関東以西在住のドライバーであれば、夏タイヤにオールシーズンタイヤを選ぶというのも、リーズナブルに安心を手に入れる方法だ。
オールシーズンタイヤは文字通り、1年を通して使えるタイヤで、夏タイヤと冬タイヤの機能を併せ持っている。
さすがに氷上性能は最新のスタッドレスタイヤとは比べるまでもないが、夏タイヤのようにスリップして発進不能になることはない。
圧雪から日中の気温で表面が溶けてガチガチに凍っているような路面では、十分に気を付けて速度を控えめにして、ブレーキも早めにそろりと踏めば十分に止まってくれる。
先日、最新のオールシーズンタイヤを氷上で試す機会を得たが、激安スタッドレスタイヤの氷上性能と遜色ないという感触だった。
それに筆者はかつて関東で大雪に見舞われた冬にオールシーズンタイヤを履いていて、ずいぶんと助かった経験がある。
クルマを通勤に利用していないドライバーでも買い物や子供の送り迎えなどで、雪が降ってもクルマを使わなければならない機会はあるものだ。
そんな時でもオールシーズンタイヤを履いていれば、タイヤチェーンを捲いたり、タイヤ販売店に慌てて駆け込まなくも済むのは、雪が降りそうになってもかなり気持ちに余裕ができる。
特に今年のように暖冬でなおかつ雪が降らないような冬だった場合、スタッドレスタイヤは出番がなく丸1年寝かせっ放しになる可能性が高い。
それはタイヤの劣化を進めてしまう原因の一つだ。外気温が7度以下であれば冬タイヤに履き替えた方がグリップ性能は高いが、手間を考えるとついついそのまま夏タイヤを走ってしまいがちだ。
それならオールシーズンタイヤの方が無駄にならないことになる。
夏タイヤにこだわるユーザーは、オールシーズンタイヤを履くことに抵抗があるかもしれない。
スポーツラジアルはグリップ力に優れるのでクルマの動きが鋭くなって運転がより楽しくなるし、エコタイヤなら燃費性能をより追求できる。
それらと冬道での安心感を含めて比べて、冬用にもう1セットタイヤホイールを確保する必要がないオールシーズンタイヤがコスパ面で有利なドライバーも少なくないのではないだろうか。
【画像ギャラリー】韓国、中国、台湾ほかアジアンタイヤ詳細写真
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March 07, 2020 at 09:00AM
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