
● 安い価格で提供するために フィスカーが取った考え方
フィスカー社(現在は買収されて社名をカルマに変更)を立ち上げた、ヘンリック・フィスカー氏が新車とともに表舞台に戻ってきた。1月に米国ラスベガスで開催されたCESで、新型EV、オーシャンをデビューさせたのだ。
オーシャンは5人乗りミッドサイズSUV(全長4640mm、300hp)。驚きはその価格で、基本が3万7499ドル、米連邦政府によるEV補助金を合わせると2万9999ドルになる。頭金として2999ドルを支払うリースも可能で、この場合の月々の支払額は379ドル。リースは期間の制約がない。
充電に関してフィスカーは、エレクトリファイ・アメリカというロサンゼルスを中心とした充電ネットワークとの提携を発表。30分で200マイル(約320km)走行できる充電網が、少なくともカリフォルニア州内で利用できる。
安い価格で提供するために、フィスカーが取ったのは世界初の完全にデジタル化した自動車メーカーという考え方だ。スマホに対応したFisker Flexeeというアプリを開発し、ここでクルマの情報やギャラリー、ゲーム的な要素まで用意。顧客はアプリで自分の求める色やオプションなどを設定し、クルマが買える。
実車を見てから購入したいというユーザーのために、今年中にフィスカー・エクスペリエンス・センターをオープンさせ、来年には試乗も可能になるという。
● フィスカーは 「世界で最もサスティナブルなクルマ」
アプリ上で自動車保険も購入できる。フィスカーとパートナーシップを結んだオンライン保険で、通常よりも20~30%安い価格で保険が提供される。安くなる理由はオンライン型で、パーツ修理や交換などは、ディーラーではなくフィスカー社で行う方式を確約している点にある。修理は各地に提携工場があり、ここにフィスカーのスタッフが出向いて行う。
支払いも同様だ。すべてのサービス、リースなどはアプリに直接課金される。第三者のファイナンスでローン購入した場合は別だが、フィスカーが提供するファイナンスまで用意されており、まさにワンストップですべてがまかなえる。
フィスカーはクルマを顧客にダイレクトにデリバリーする。「仲介も排除することで、これまでよりも安い価格でクルマが提供できる」とフィスカー氏は語る。
今後グローバルに展開するうえで大切にしている点は「地元企業からの部品調達」だ。部品の輸送費が抑えられ、現地調達、現地生産、現地販売が可能なネットワークを構築する。フィスカーは「2022年から27年の5年間で100万台のクルマが生産できるグローバルサプライチェーンを確保した」という。
フィスカーは「世界で最もサスティナブルなクルマ」だという。ルーフ全体がソーラーパネルになっており、1年に約1000マイル走行できる電力を生み出す。年間1000マイルは1日3マイル程度。しかも晴れた日限定。だが、「技術が改良されれば、もっとソーラールーフからの電力供給量を増やすことができる」という。
この他、オーシャンの内装の多くがリサイクル製品を使っている。カーペットは海から回収された漁業用のプラスチック網、ドアの内側などに使われている人工スエードは古いTシャツなどからリサイクルされたもの、ウィンドシルのラバーもペットボトルからの再生品だ。
オーシャンが安っぽいクルマかというと、決してそうではない。シャープな流線型は最近のEVのスタンダードともいえるものだが、やや幅広にしてスポーティな走りを可能にしている。
オーシャンは2021年のデリバリー分はすでに売り切れ状態。いま250ドルの予約金を支払ってもデリバリー開始は2022年後半の予定だ。フィスカーは今年のジュネーブモーターショーにも出展し、オーシャンに続くモデルなどの発表を行う予定だ。
(報告/土方細秩子、まとめ/CAR and DRIVER編集部)
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