2020年4月13日(月)、トヨタは新型ハリアー(フルモデルチェンジ)を発表した。
この新型の登場を心待ちにしていたファンも多いことだろう。都市型SUVの先駆車であるトヨタハリアーであるが、4代目にあたる今回の新型では、クルマのポテンシャルをさらに磨きあげたうえで、実用性や数値一辺倒ではない、人の心まで優雅に満たしてくれるようなクルマ作りを目指したという。
デザインや車両諸元、パワートレイン、グレード、ボディカラーなど、明らかになった情報をもとに、新型ハリアーはどれほど進化したのか、迫ってみよう。
文:吉川賢一 写真:TOYOTA
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■歴代ハリアーはどういったクルマだったのか?
初代ハリアーが登場したのは1997年。バブル経済が破綻し、クルマの需要が、スポーツカーや高級セダンなどから、ミニバンやSUVへと変化し始めた頃だった。
初代ハリアーは、「高級サルーンの乗り心地と快適性を兼ね備えたラグジュアリーなクロスオーバーSUV」という斬新なコンセプトを持ってデビュー。当時SUV (という言葉はまだ誰も使っておらず、「クロカン四駆」と呼ばれていた)といえば、三菱パジェロのような無骨でゴツゴツしたイメージが多かったなかで、ハリアーは、流れるようなエクステリアや質感の高いインテリアで登場し、ゆったりとした乗り心地で、多くのファンを魅了した。
「WILD but FORMAL」のキャッチコピーで、スーツを着たライオンをキャラクターとして使用した、インパクトのあるCMを覚えている諸氏も多いだろう。また、その人気は日本にとどまらず、北米でも「レクサスRX」として熱狂的に受け入れられた。
2代目ハリアーは2003年に登場。より大きなマーケットである北米のユーザーを意識し、ボディサイズがひと回り大きくなった。初代ハリアーのコンセプトを引き継ぎ、高級サルーンのような流麗なエクステリアと、さらに高級感が増したインテリアで登場した2代目は、2005年にはハイブリットモデルも追加され、初代同様、人気車となった。初代ハリアーの大ヒットを横目で見ていた海外メーカーから、高級SUVが続々と登場したのも、このころだった。
3代目ハリアーは2013年に登場。このモデルからレクサスRXとのモデル共用をやめ、国内専売モデルとして独自のデザインを得た。日本の道路事情にあわせ、2代目ハリアーに対してボディ寸法やホイールベースがサイズダウンされたが、歴代ハリアーの伝統である、デザインや乗り心地の良さは、受け継がれた。また、ボディが軽量化され、パワートレインもダウンサイジング&新設計されたことで、燃費性能が大きく向上。こうして、ハリアーは3代目も、人気を得ることに成功した。
そして2020年の6月、いよいよ4代目の新型ハリアーが登場する。
■新型ハリアーはどういった立ち位置なのか?
新型ハリアーは、外見やイメージこそ大きく違うが、あの現行型RAV4と「血」が繋がっている。
新型ハリアーには、RAV4で評価の非常に高かったTNGAプラットフォーム(GA-K)が採用される。これにより、ボディの高剛性化や低重心化など、SUVとしての走りや快適性といったポテンシャルは、3代目に比べて、大きく向上するだろう。
パワートレインもRAV4と同じく、ガソリンエンジンは、2.0L直列4気筒直噴エンジン(M20A-FKS)を採用。TNGAによって一新した、最新のダイナミックフォースエンジンとDirect Shift-CVTを組み合わせた走りは、新型ハリアーにも適しているだろう。
ハイブリッド仕様は、熟成のハイブリッドシステム(THSII)である、2.4L直列4気筒ハイブリッド(A25A-FXS)だ。RAV4で感じた、ダイレクト感ある走りと、優れた燃費性能の両立が期待できる。最大出力や最大トルクの値も同一のため、ほぼそのまま搭載されると思われる。
サスペンションもRAV4と同様、フロントにマクファーソンストラット式、リアにダブルウィッシュボーン式を採用。前後のサスペンションジオメトリを最適化し、乗り味を追求するため、徹底的な走り込みが行われたという。2mm/秒という極微低速のピストン速度域でも、スムーズなストロークを確保したショックアブソーバーを採用し、走り出した瞬間や、高速走行時の車両挙動の収束性を狙っている。なおタイヤサイズは225/55R19が標準設定だ。
気になるボディサイズだが、新型ハリアーは、3代目ハリアーに対し、全長が15mm長く、車幅は20mm広く、ホイールベースは30mm長く、つまりひと回り大きくなる。全長を除くと現行型RAV4とほぼ同じサイズだ。いっぽうレクサスRXと比べるとひと回り以上小さく、日本国内での取り回しには、さほど苦労することはないだろう。
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3代目ハリアーへとモデルチェンジした際、海外市場からの需要で大型化が望まれていたRXと決別し、国内向けにサイズ縮小したことは、ハリアーが国内市場で生き残れた理由のひとつだと筆者は考えている。クルマは肥大化すれば万事良いわけでは全くない。新型ハリアーのボディサイズを見て、個人的にはひとまずほっと安心した。新型ハリアーは間違いなく「国内ラグジュアリーSUVのベンチマーク」となるだろう。
■進化ポイントとライバルと比べたときの優位点は?
さらに、新型ハリアーについて、進化したポイントを深掘りしていこう。
エクステリアデザインは、実に流麗なプロポーションとなっている。フロントアッパーグリルからヘッドランプへと流れるようなシルバーラインが、精悍かつシャープな印象を与えている。 二重のL字型に発光する薄めでシャープな「シグネチャーランプ」により、遠くからでも新型ハリアーと分かるだろう。
サイドビューはシンプルな面構成だが、リアに向かって入ったキャラクターラインや、リアフェンダー上のラインが、ダイナミックな流れのイメージを与えてくれる。またサイドガラスの上下幅が狭いことで、キャビンはクーペのようにも見える。RAV4と同様に、ドアにサイドミラーがつくかたちになっていることで(※先代はピラーにサイドウィンドウ)、運転席からの死角が更に減っている。また、リアビューは、細く、鋭く、横一文字に光るテールランプとストップランプで、これまた圧倒的な存在感を放っている。
ボディカラーはプレシャスブラックパールをはじめとして、彩度を抑えたカラーを中心に、全7色が設定される。全体のフォルムはRXにも見えるが、RAV4並の1855mmの全幅で納められており、まとまり感があって良い
インテリアの進化も素晴らしい。センターコンソールは幅広く、上質な革で表皮が覆われている。トヨタによると「馬の鞍」をイメージしているとのこと。インストルメントパネルとのつながりも左右対称のようにも見え、すっきりとしている。ダッシュボードに使われている素材の質感も高い。「曲木(まげき)」に着想したウッド調加飾やパイピング加飾を随所に配し、上質感を演出している。
インテリアカラーは、コントラストを抑えたブラウン、グレー、ブラックの3色を設定。どのカラーも、落ち着いた大人の室内空間を表現している。RAV4のように遊び心があるインテリアでもなく、RXのように木目調パネルを用いたいかにも高級サルーンといった雰囲気でもなく、「清潔感のある高級なインテリア」といった印象だ。
インパネ中央最上段に位置する「12.3インチTFTタッチワイドディスプレイ」のT-Connect SD ナビゲーションシステムは、Apple CarPlay、Android Autoといったスマートフォン連携機能に対応。9スピーカーのJBLプレミアムサウンドシステムも備える。またトヨタ車初採用となる、調光ガラスを用いた電動シェード付パノラマルーフも装備。調光時には、障子越しのような柔らかい光が差し込み、一段と上質な室内空間となる。
また、走行中の前後方向映像を録画可能なデジタルインナーミラーも、トヨタ車として初採用となる。こうした先進機能をもつのは、新型ハリアーの魅力であり、ライバル車に勝つための武器となるだろう。
■まとめ「RAV4と2トップに」
この新型ハリアーの車両価格は、まだ発表されていないが、装備から予測すると300万~450万円といったところであろう。コンセプトの近い競合車はRXやNX、CX-30やCX-8だが、価格やボディサイズも含め、ガチンコのライバルとなるクルマは見当たらない。価格次第では、ワイルドなSUVのRAV4と、都会派SUVの新型ハリアー、この2トップで国内ミドルクラスSUVをけん引する可能性もある。
3世代にもわたって成功を続けてきたクルマは、そうはいない。この新型ハリアーがどれほどの成功を収めるのか、期待が持てる一台であることは間違いない。発売開始は2020年6月だ。
■新型ハリアー主要諸元(G 2WD)
全長/全幅/全高 4,740mm/1,855mm/1,660mm
ホイールベース 2,690mm
トレッド(Fr/Rr) 1,605mm/1,625mm
最低地上高 195mm
車両重量 1710kg
最小回転半径 5.5m
乗車定員 5名
排気量 2487cc+モーター(ガソリン仕様は1986cc)
タイヤサイズ(Fr/Rr) 225/55R19/225/55R19
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April 13, 2020 at 11:30AM
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