花粉やPM2.5、ハウスダストといった物質を除去し、いかに豊かで心地よい空間をつくるか。空気の質への意識は、新型コロナウイルスによるパンデミック以降、自室に留まる時間が長くなり、より一層関心が高まったのではないだろうか。
活況を呈す多機能・イオン方式が主流の日本の空気清浄機市場に、単機能・フィルター方式で勝負をかける家電ヴェンチャーがある。cado(カドー)だ。
「一輪の花が生けてあるだけで部屋の空気が華やかになるように、ただ空気をキレイにするだけではなく、カドーのプロダクトが佇んでいるだけで空間の雰囲気までをもデザインできるような存在でありたい」
ブランド名は、創業者で代表の古賀宣行とデザイナーで副社長の鈴木健のふたりの想いを表した「華道」と、愛着の対象となるプロダクトなるようにという想いを込め、フランス語で「贈り物」の意味するカデウに由来する。
美しい空気と、心地よい空気感
2011年のブランド設立以来、カドーは「We design for atmosphere.(空気をデザインする)」というタグラインを掲げ、空気清浄機、加湿器、除湿機、除菌脱臭機、電気ヒーター、アロマディフューザー、ヘアドライヤー、と一貫して「空気」というカテゴリーに特化したプロダクトをつくり続けている。
「古賀とわたしは、長年メーカー側の論理や市場データを重視しすぎた電化製品にかかわってきたこともあり、独立するならばユーザーに寄り添ったプロダクトをつくりたいと考えていました。人にとって重要なものとは何かと考え、行き着いたのが水と空気でした。創業当時、PM2.5が問題になっていたこともあり、空気を選択したという背景もあります」と鈴木は空気にこだわる理由を話す。
カドーが考える空気は、雰囲気としての“空気”にまで及ぶ。空間の雰囲気を損なわないような、淡いカラーとミニマルなデザインがプロダクトの特徴だ。
それゆえ、“デザイン家電”として語られることも多いが、「その文脈には少なからず違和感を覚える」と鈴木は言う。デザイン先行のデザイン家電ではなく、機能性を伴ったプロダクトを市場に送り出しているという矜持があるからだ。
「長年、インハウスデザイナーとして家電のデザインを突き詰めていくなかで、『機能』について考えることが多くなっていました。どうすれば、高い技術とデザインが融合できるのか、と」
エンジニアである古賀もまた、鈴木とは逆の視点から同様の想いを抱いていた。大手メーカーでキャリアを積んできたふたりにとって、奇しくも機能とデザインの融合は、積年の課題でもあった。
エンジニアとデザイナーの矜持
単なる“デザイン家電”という色眼鏡で見られないために、デザイン性を凌ぐ、消費者の誰もが納得する機能を搭載する。高い次元での技術とデザインの融合は、カドーがプロダクトをつくるうえで欠かすことができない条件だった。
その考えがもっとも表れているプロダクトが、ブランド設立時から同社の主力モデルとしてラインナップされているフィルター式空気清浄機「LEAF」だ。
空気清浄機でもっとも重要な機能は『浄化スピード』。いかに落ちる前に吸い上げるか。PM2.5をはじめとした有害物質、ウイルス、ホコリなどは、一旦床に落ちてしまえば、どんなに強力な空気清浄機でも吸い上げることが難しいからだ。
「LEAFは筐体全面のスリットから吸引した空気を、真上に送風させる斜流ファンをオリジナルで開発し、空間の空気を大量に循環させることで、高い浄化性能を実現しています」
そして、浄化スピードとともに空気清浄機の機能を左右するフィルターにも高い技術が搭載されている。
粒子径が2.5μm以下と言われるPM2.5を捕獲する最小物資捕獲サイズ0.09μmのフィルターに加え、ニオイや菌を吸着する活性炭と可視光(LED光)で反応する新型光触媒技術で実現した独自開発の「フォトクレアテクノロジー」によって、フィルターに吸着した汚れや菌を強力に分解し、確実に除去する。セルフクリーニング機能も備えているので、フィルターの吸着力を自己再生し、長寿命化を実現している。
空気清浄機の性能を測るうえで、AHAM(米国家電製品協会)が定める空気清浄機の世界基準「CADR(クリーンエア供給率)」という評価がある。CADRとは、空気清浄機が1分間あたりに供給する清浄な空気の量を表した指標で、多くの家電メーカーが性能評価のベンチマークとしている。
この評価基準において、LEAFは2012年に日本のメーカーで初めて世界最高値を獲得した(※AP-C700として)。技術への妥協なき姿勢は、数値となって表れている。以来、プロダクトがアップデートされるたびに審査を受け、現在も世界最高水準を保ち続けている。
ヴェンチャー企業にとって、審査料や輸送コストなど、基準をクリアするためにかけるコストは決して安くはない。
それでも審査を受け続ける理由を鈴木は「高い技術力とデザインが融合していることを示すためには、客観的な評価が必要です。モノが飽和し、つくれば売れる時代ではないなかで、自分たちの世界観やプロダクトの背景にあるストーリーを伝えていくために、必要不可欠な要素だからです」と説く。
人に寄り添ったプロダクト
これまでの家電の多くは、機能はいろいろ付いているけれど、使わないものであったり、デザインが過剰だったり、と本当の意味で人に寄り添ってなかったのではないかと鈴木は言う。
カドーが単機能にこだわるのは、メンテナンスのしやすさと壊れにくさを求めた結果であるが、その背景には、性能を十二分に引き出すことと、長く使ってもらいたいという想いがあるからだ。
「家電とは本来、ユーザーの暮らしに添っていて、機能もデザインも“ちょうどいい”ものを言うのではないかと、わたしたちは考えています。多機能であることや便利なものだけが豊かさではないということを、カドーのプロダクトから伝えられるように、ものづくりを追求していかなければ、いつまでも表層的な“デザイン家電”の枠から抜け出せないのではないかと思います」
「空気をデザインする」というダグラインのもと、カドーは空気をきれいにする機能と豊かな空間の創造を両立する、新たなデザイン家電のカテゴリーの創出を目指している。
[ cado公式サイト ]
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September 28, 2020 at 08:00AM
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